OUI Inc.の代表取締役、CEOであり、医学サイドをリードしている清水映輔医師、Smart Eye Cameraの事実上の発明者であり、工学サイドをリードしているチーフ・ハードウェアエンジニアの横岩良太、事業サイド・ビジネスサイドをリードしているCOOの中山慎太郎の3名が、座談会形式で、OUI Inc.の現在について語りました。
左から、中山慎太郎(COO)
清水映輔(代表取締役・CEO)
横岩良太(チーフ・ハードウェアエンジニア)
起業経緯
2017年10月に、眼科としてベトナムの田舎の地域に、無料白内障手術ボランティアに行きました。その際、現地には眼科の診断機器が1つもなかったので、手術の機械や薬剤など全て持参しました。この時、診断機器がないかわりに、医師や医療従事者は、ペンライトを持って患者さんの診察を行いました。ただ、ペンライトも電池が粗悪で、1時間か2時間で電池が切れてしまいました。この時、現地の方々は、ペンライトの代わりにスマートフォンの光源を利用して目の診察を行おうとしており、スマートフォンの光は当然、眼の診察に特化した光でないため、この瞬間にスマートフォンに何かしらのアタッチメントをつければ、目の診察が行えるかと考えたことがきっかけです。
実は、起業したのは2016年で、Smart Eye Cameraの事業アイデアを思いつくよりも前のことなんです。始めは一番の眼科医になろう、負けたくないという思いで日々勉強していましたが、眼科医個人だとできることが制限されるので、会社をつくって活動するのがいいのかなと考えるようになりました。その時私は眼科医として2~3年目の初期研修医でしたので、この時期にサイドキャリアを描くというのは非常に珍しいケースでした。
私が起業を考えたのは、父の影響が強かったのかもしれません。父は外資系企業に勤めていて、その後自分で会社を立ち上げて上場もしています。自分の身近にビジネスのことを相談できる相手がいたことは、周りの医師との大きな違いだったと思います。
今でこそ医師や医療従事者が起業するのが当たり前の中になってきておりますが、当時は医局に所属していたこともあり、起業すること自体が王道から外れると言うイメージがありました。また、医局の先輩に当たるほとんどの先生方も同じような価値観で育ってきているので、 起業すること自体にネガティブなイメージを持つ医師が多かったと記憶しています。
ただその中で、私が入局した当時の眼科教授である坪田一男先生(現、株式会社坪田ラボ社長)から「眼科医として一人前になるのは当たり前。アメリカの優秀な眼科医は、医師として一流になるのは当然で、起業して自分の研究を実用化している。」と言う話を聞き、 その言葉を励みに眼科医としての勤務が終わった後に、眼科の勉強も並行しながら、財務諸表の読み方など、今まで知り合えなかったような知識を勉強していきました。
僕は2019年に、OUI Inc.に加入しました。ちょうどSmart Eye Cameraの試作品が完成して、これから世に出していこう!というタイミングでした。そんな僕から質問にお答えしますと、「特に障壁や葛藤はなかった」というのが答えになります。もう少し正確に言うと、障壁や葛藤がなかったわけではもちろんなくて、沢山あったと思うのですが、あまり覚えていません(笑)
なぜかというと、何か障壁があっても、必ずそれを乗り越えようとして一生懸命取り組み続けてきたからです。その結果、乗り越えられたものもあるし、うまくいかなかったこともありますが、逆にうまくいかなかったことが、新しい方向に進むきっかけになったこともあります。常に前を見て進んでいるチームなので、振り返ってどんな困難があったか?と改めて聞かれても、うまく答えられない、ということかと思います。
メンバー
僕が清水先生に初めて会ったのは2019年の夏頃です。ちょうど副代表を務めていたNPOを辞めて、個人で独立したばかりの頃でした。何をするかも決めずに独立してしまったので、何もすることもなくプラプラしていた時に、友人の紹介で清水先生にお会いしました。その時の僕の印象は、自分が面白い・やりたいと思ったことは、何にでも全力で取り組む人なんだな、ということですかね。OUI Inc.の代表をしながら、慶應でも臨床医として活動されていて、当時、ちょうど新しく自分のクリニック(横浜けいあい眼科)を立ち上げようとされていました。さらに学生時代からアイスホッケーを続けていて夜中はアイスホッケーをやっている、という話を聞いて「こういう人、本当にいるんだ!!」と驚いたのをよく覚えています(笑)
僕自身も、途上国や海外のキャリアが長いのですが、日本の地方にも興味があり、医療以外にもスポーツや音楽の世界でもやってみたいことがあって、「やりたいことや面白いと思うことを、何でも一生懸命やって、それで生きていけたらいいな」と思っていたところだったので、清水先生のそういうところにすごく共感しました。「やりたいこと・面白いと思うことは、なんでも一生懸命頑張って楽しむ」ところは、OUI Inc.を特徴づける一つのカルチャーになっていると思っています。
ジョインした経緯としては、OUI Inc.は当時、ちょうどSmart Eye Cameraの前眼部モデルが完成して、実際に途上国で実証をやろうとしていたところで、途上国にガンガン行ける人を探しているタイミングでした。そこで、世界のどこにでも一人で突撃できそうな人が必要、ということで僕がジョインすることになりました(笑)
僕は以前、製品試作などをお手伝いする会社で働いており、そこにSmart Eye Cameraのアイデアを携え清水さんが来られました。丁寧で礼儀正しく、そして「速い」方だなと感じたのを覚えています。僕は割とせっかちで、歩くのも不自然なくらい速いし、エスカレーターに止まって乗っていることができないようなところがあるのですが、清水さんは会話などのテンポが早くて小気味良かったです。どう考えても、もの凄く多忙だったと思いますが毎週のように足を運んで頂きミーティングをしていました。「できないかもしれないけれど、でもやってみましょう」という、失敗を当然のステップとする姿勢が明白で、共同開発も常に前向きにできたと思います。
今のOUI Inc.主力製品である前眼部モデルが完成した時に「これで沢山の人を救うことができる!」と清水さんが大喜びされていたことが大変印象的です。僕はその瞬間までSmart Eye Cameraの重要さに気付いていませんでした。そうこうするうちに、残念ながら親会社の方針が変わり、その試作支援の会社はクローズすることになってしまいます。大企業の子会社で、信じられないくらいに恵まれた環境だったのですが致し方ありません。そして清水さんにお声掛け頂き、OUI Inc.にジョインすることにしました。
最高執行責任者(COO)として、日本・海外すべてのOUI Incの取組の、事業サイドの責任者をしています。OUI Inc.は現在アフリカ・アジア・中南米中心に世界60か国以上で実証プロジェクトを進めていると同時に、日本でも伊豆・小笠原諸島等の離島地域や、医療へき地・また都市部でも健診機関や訪問診療を行っている医療機関など日本全国で様々なプロジェクトがあります。僕はその全部を担当しているので、日本全国・世界各国を飛び回って活動しています。2024年は数えたら17か国海外出張していて、それと同時に、宮古島、御蔵島、利島、式根島などの離島を含め、日本国内でも東西南北駆け回っています。 並行して個人事業でも活動していて、2019年のラグビーワールドカップではアルゼンチン代表の帯同通訳を務めました。また学生時代にプレーしていた縁で、ラクロスの国際大会の企画・運営や、2024年はアルゼンチンの国立青少年交響楽団の日本公演の招致・企画・運営にも携わりました。忙しいですが、自分がやりたいことをなんでも一生懸命やって生きられているのはすごく充実感があります!
横岩僕はハードウェアを担当していて、割合としては開発に割いている時間が一番多いかと思います。製品開発は本質的には「これまでなかったものをどうにかして作る」ということなので「いつまでに何ができる」という風に時間を読むことが難しいのですが、有り難いことにスケジュールなど含め全て一任して頂いており、産みの苦しみはあるものの大変働きやすいです。3Dプリンターなどを使って制作した試作品を清水さんにお渡しすると、医師の目線でのフィードバックが素早く帰ってきて、それを元に改良を行なっています。 またハードウェアの製造についてですが、OUI Inc.の製品は国内だけではなく海外でも製造しています。一例としてはブータンが挙げられ、僕も現地を訪ねてミーティングを重ねました。新しい製品のアイデアがどんどん出て来て開発が追いついておらず、最近はラボに篭ってしまいがちですが、希望すれば色々な場所に出て行けるという自由がOUI Inc.にはあります。
事業の将来像
OUI Inc.は「世界の失明を50%減らし、眼から人々の健康を守る」をミッションにしています。現在世界の失明人口は4,400万人、30年後の2050年には1億2,000万人に増加すると言われていますが、これらの患者さんの半分以上が、眼科医療に対するアクセスがないことが原因で、予防可能・治療可能な病気によって失明しています。Smart Eye Cameraを活用して、日本中・世界中の眼科医・非眼科医・医療関係者の方々と力を合わせて患者さんに眼科の診断を届け、治療につなげるモデルを作ることができれば、世界の失明を50%減らすことは十分に実現可能な目標だと思っています。
こういった私たちのミッションに沢山の方に共感して頂き、これまで国際機関・政府機関から5億円以上の助成金を頂きながら活動してきました。それと並行して、Smart Eye Cameraの販売・展開も行っており、日本・EU・ケニア・ブラジル・ベトナム・カンボジアをはじめ、世界各国で販売活動も行っています。
実は私たちのプロダクトはまだ未完成で、今の機器では観察できない眼科疾患を見つけるためのハードウェアや、Smart Eye Cameraで撮影する眼科画像を機械学習にかけることで開発可能となる眼科疾患の自動診断AIなど、日夜研究開発を行いながら、ビジネス開発も行っている状況です。
OUI Inc.は医師だけでなく、同じ思いを持った人たちがそれぞれ自分の力を最大限発揮することができる企業であり続けたいと考えています。そしてその力が有機的に作用し合うことで「眼からの人々の健康を守る」 といった世の中を創っていくことができる企業になりたいと思います。
OUI Inc.は「世界の失明を50%へらす」 ことがミッションです。
ミッションを達成するには、組織の全員が同じ方向を向かなければなりません。
壮大なミッションに感じられますが、実はそこまで非現実的な内容ではなく、チーム全体でバリューを意識すれば十分達成可能だと考えています。
OUI Inc.のバリューは、「Grit It Done」 限界を作らずやり抜く、「Evidence First」 エビデンスを作りながらビジネスを回し続ける、「Be Cosmopolitan and Innovative」 性別・年齢・人種関係なく 力を発揮する、の3つです。
この3つを常に意識して、チーム全体でOUI Inc.のバリューを達成すれば、自ずと結果は見えてきます。
医学・ビジネス・工学の専門家が力を合わせて、世界の予防可能な失明・視覚障害の克服に取り組んでいるところが、OUI Inc.の素晴らしいところだと思います。それに加えて、日本人だけでなく、多国籍のメンバーがおり、言語や文化の違いを超えて、それぞれの強いところを持ち寄って大きな力を生み出せるところも大きな強みだと思います。
横岩どんな組織であっても事業の推進には問題が付き物で、通常の場合、問題は問題です。 問題が発生すると「問題が起きた」と認識して一旦足を止めて、その対応を考えることになります。だけどOUI Inc.の場合、問題はあまり問題ではないように見える。問題はちょっとした示唆やアドバイスとして捉えられ、それに応じた新しい経路が導き出されます。無論、大きな方向性を保ったまま。組織の性質というものはトップに依存するわけで、CEOである清水さんがチームの性質を象徴していると思いますが、清水さんにしても中山さんにしても、ある問題に対して「ではこうしましょう」というのが瞬時に出て来る。そのダイナミズムみたいなものがチーム全体に伝搬することで、常に前進し続けるという意志が共有されている。個々人の専門性の上にそういう意志が載っていることはOUI Inc.の強みだと思います。
ヒトについて
OUI Inc.は「世界の失明を50%へらす」 と言った、壮大なミッションに チャレンジしています。
日本から世界の社会課題を解決できる。 こういったことに興味を持ち、実践できるメンバーと共に仕事をしたいと思っています!!
OUI Inc.の特徴は、全世界・日本全国・分野横断・縦横無尽なところだと思います。また、眼科医がはじめた会社なので、最終的には、「そこにいる、助けが必要な患者さんを救えるかどうか」を一番大切にしています。ですので、海外だけ、国内だけ、とか、医療サイドだけ、事業サイドだけ、開発サイドだけ、とかではなく、どんな領域にも、限界を設定せずに縦横無尽にチャレンジするエネルギーを持った方に是非ジョインして頂きたいです!!!
OUI Inc.は 漠然とした社会課題に対し、様々な角度からのアプローチを行っています。そのため、顕在化している市場を 取り切ると言うよりは、新しい市場を自ら作り、自ら全てを刈り取っていく。そのためには、自分、そして自分の周りのチームメンバーをやる気にさせる必要があります。1日1日がすべて成長機会と捉え、 自分で考え、考えた成果を自分で結果にすることができ、多方面での成長が可能です。
また、国内だけでなく、海外展開も積極的に行っており、 ターゲット市場はこの地球であるため、自分を際限なく成長させることが好きな方には最適な職場です!!
全世界・日本全国・分野横断・縦横無尽にチャレンジができるので、とてつもない成長機会があると思います。チャレンジの中で、当然、自分のスキル・経験では足りない部分は出てきますが、そこで食らいついて勉強していく気概があれば、僕たちみんなでサポートもしていくので、大丈夫です!僕自身も、3年前に、西アフリカの医師の先生たちに事業の説明をする機会があり、それをきっかけに全くゼロからフランス語の勉強を始めました!!
OUI Inc.はやる気さえあれば、どんなことにもチャレンジできる環境を提供しています。 やり抜く力が あればこそ、自身の成長につながり、 どこまでも自分自身を成長すること ができる 職場です。意識高く、ガンガン物事を進めることがお好きな方に最適な環境で、そういった方々と一緒に世界の失明を半分にしたいと考えています!!!
中山僕は、人にはみんな、ものすごく大きな可能性が眠っていると思っています。転職活動・就職活動って、どうしても今までの知識・経験から逆算して進路を探しがちになってしまうと思うのですが、そういう視点ではなく、まだ眠っている自分の可能性を爆発させるために、最適な環境はどこなのか?という観点から働く場所を探してみるのも面白いんじゃないかと思います。そしてOUI Inc.はそういう方にとっては本当に最高な環境だと思うので、そういうチャレンジをしたい方に、ぜひ扉を叩いてほしいです!一緒に可能性を爆発させましょう!!
横岩
ほとんど半世紀も前に複雑系の研究が導き出した一つの帰結は、僕達の生きるこの世界はあまりに複雑であり、人類はその振る舞いを予測することができないというものでした。僕達は日々、無数の選択を行なっていますが、その結果は往々にして全く予想外のものになってしまいます。選択の結果を予測できないのであれば、では僕達は何を根拠にして選択を行えば良いのでしょうか。拠り所となるのは自己に内在する「気になる」とか「やってみたいみたい」みたいな感覚で、それ以外の打算的な要素は本質的には機能しないと僕は思っています。何故なら少なくとも長い目で見ると予測はほとんどの場合外れてしまい、良くても悪くても、その結果を納得して引き受けるには「あの時の自分がこうしたかった」という事実が必要だからです。
もしもOUI Inc.のことが少しでも気になるようであれば、是非ご一緒しましょう。僕達はありとあらゆる無意味な慣習を排し、自由闊達を重んじるチームです。
3人の略歴
清水 映輔/Eisuke Shimizu
OUI Inc. 代表取締役 CEO 眼科専門医
慶應義塾大学医学部卒。日本語と英語のバイリンガル。眼科専門医・医学博士。専門はドライアイ・眼アレルギー。2016年にOUI Inc.を創業。国際医療支援活動の際に発展途上地域における眼科診療の問題点を発見し、その解決策としてSmart Eye Cameraを開発・実用化。他にも動物モデルを使用した基礎研究も行う。慶應義塾大学医学部眼科学教室 特任講師。
中山 慎太郎/Shintaro Nakayama
OUI Inc. COO(最高執行責任者)
一橋大学法学部卒業。株式会社国際協力銀行、独立行政法人国際協力機構、 三菱商事株式会社、NPO法人クロスフィールズを経て、 2019年よりOUI Inc.に参画。英語・スペイン語・フランス語対応可。慶應義塾大学医学部眼科学教室 研究員。
横岩 良太/Ryota Yokoiwa
OUI Inc. チーフ・ハードウェアエンジニア
京都工芸繊維大学博士後期課程単位取得退学(設計工学専攻)。ファブラボ世田谷、テックショップジャパン株式会社にてデジタルファブリケーションに従事。2020年よりOUI Inc. に参画。